三村 文月

短編を読むのに、これだけ時間が掛かったのは初めてだ
物語の中で登場しているのが人間なのか、動物なのか。残念ながら私にはそれすら分からないので妄想上、“少女”と“男”で以後書かせていただきます。

「なまえをちょうだい」、と言う少女に
「――――じゃだめなの?」、と聞く男。

その申し出に少女が首を縦に振ることはありません。

少女がその名を拒む理由は、男にとってその名がどのような存在かを示すヒントのように感じられます。

カリン……昔の女とか?
クロエ、プラダ……ブランド名か?
リズム……はあッ!?

このあたりで断念。感性のままに読み進めることを決意致しました。

作者さま、不愉快な表現に感じられたら申し訳ありません。少女の存在は、何となく『我輩は猫である』の“我輩”を思い起こさせます。どこか男を客観視、というか観察しているような。

最初に比べ少女の口調が段々と感情的になっていく部分は、ぞくりというか……危うい。そして、死んだ、消えた?私にはもう、少女が生き物だと言い張れる自信さえないです。

読後、読者の想像力を煽らせる作品。何かをするたび、「気にいらないわ」と少女のダメ出しが聞こえてきます。