白昼夢

ムードを重視した、物語の織り成しは美しいです
上巻よりサクサクと読める文章は、登場人物が確かにそこに息づいている証拠でしょう
悪役の行く末も腑におち、散りばめられた問題もキチンと解決して、ストーリーとしては納得の大団円


しかし上下巻に分けてあるにも関わらず、章が変わっただけのような唐突な始まり
上巻から時を隔てて読む読者を考慮に入れ、簡単な前振りは必要ないでしょうか


あと筆者様のキャラ作りが完全すぎて、登場人物のイメージを強引に誘導させる箇所が見受けられます
1P目リリを「穢れを知らない純粋な心性」と言っていますが、人身売買されていた彼女の境遇に読者が抱くイメージは人それぞれ
読み手にキャラのイメージを訴える手段が、行動の描写ならすばらしかったと思います


それからムードを重視するあまりの体言止めの多用は、詩文のようで美しくもありますが、小説として読むと、宙に放り出されたような座りの悪さを感じる事もありました


でも孤独に生きるピセラにも救いが与えられ、ユウたちの未来も輝いていて、すっきり爽やかな読後感は読者を幸福にしてくれます
ストーリーの作り手として、すばらしいと思います