腕の傷と奇妙な白眼は治る事はあるのだろうか。


厳しい試練の先には本当に明るい未来が待っているのだろうか。


歪みきった性格を変える事ができるのだろうか。

ワールデンブルグ症候群ってしってるかい?俺はその病気なんだ。だから、色彩異色症で左目だけが色素が抜けたように碧くてさ。それに加えて左耳は難聴気味。そして、まだ21歳にしてこんなに髪の毛が白髪なんだ。髪の毛を染めてる訳でもないし、眼帯も格好つけでしてる訳じゃない。


病気なんだ。唯それだけ。


病気のせいで、小さい頃から若干身体が弱くてよく風邪なんかを引いてたかな。小学校までは病弱な変わった子として通用してて、中学時代は「厨ニ病」を口実にやり過ごしてた。何時だったか、過ごしにくくなったのは高校二年生の頃だったかな。流石に17にもなると厨ニ病も通用しなくってさ。散々に馬鹿にされたよね。幸いいじめには発展しなかったからよかったものの病気と言っても信じてくれない人も居たし、街中を歩く時が一番の苦痛だったよ。街中で出逢った人達に「僕は病気です」と言い回ることなんて出来ないだろ?街を歩く人たちは僕の変わった容姿に釘付けだったよ。



…それで、話は変わるけど君はどうして俺の病気について聞きに来た訳?君も眼帯してるみたいだし、目の病気か何か?残念だけど俺は眼科医ではないから目の病気について知りたいのなら他をあたってくれ。詳しいのは大学で学んでる心理学だけなんでね。心理学の事ならば答えられる限りは答えるつもりさ。と、まぁ。まずはここに来た理由を俺に教えてよ。そんなに怯えなくていいってば。僕は君の先輩だ。話してご覧よ───。



私の先輩であるヘテロクロミアの彼はにこりと微笑みを浮かべながら優しく私にそう告げ、すっと隣りのベンチに腰掛けてきた。この人なら、私のこの異様な左目の事を受け入れてくれるかもしれない。きっと私の目は病気なんかではない。自分ではよく分からないけど他の何かのはず。それでも先輩は受け入れてくれるのだろうか。私の中で不安な気持ちと期待の気持ちが入り交じっている。でも、折角の機会だし話してみようか。私はそっと口を開き、奇妙で滑稽な事実を語りだした。



「水音似掻き消される程の小さな声で、あの日起こった不気味な事件を。」