鍛え上げた肉体を持ち美しい恋人までいた光の戦士の俺が、転生の呪文を噛んだせいで普通の女の子として日本に生まれ、俺だと気付かない魔王に惚れられ、散々な目に遭う話だ

世界は無数に存在する。


光の戦士である俺はその無数の世界に何度も転生し、同じように何度も蘇る魔王と戦う役目を持っていた。


魔王とは人心を狂わせる力の塊で、地上に降り立つときは人の肉体に宿っている。


その肉体を俺の魂から作り出した光の剣で貫き、殺すことで、互いを相殺し、少しづつ魔王の力を削ることが出来るのだ。


回を重ねるごとに、魔王の力は減り、俺の魂も削られていくから、どんどん泥仕合になっていくのは辛いところだが……。


俺たちは、あと少しで完全に魔王を消すことが出来るところまで来ていた。


だから……最後の一回だった。最後の転生のため、次の世界へ飛ぶための呪文を唱えたときに……。


やってしまった。


俺は……噛んだ。呪文を噛んでしまった。


そのせいで、地球の日本に……女の子として生まれ変わってしまった。


しかも中々記憶が戻らず、高校に入ってから何もかも思い出しはしたが、もういろいろと遅かった。


何度生まれ変わっても見つかるように、目立つ場所にいてくれ。


なんて言わなきゃよかった。


相棒であった騎士のエランディオスは俳優として活躍してるし、恋人だったレイファ姫はトップモデルだし、参謀として傍に居てくれたロビウ爺さんは若手売れっ子作家だ。


しかもしかも。

魔王は、俺の高校で氷の魔王と呼ばれる冷酷な生徒会長で、その上なぜか俺に惚れている。


性別のせいで、俺が光りの戦士だと気付いていないくせに、相反する力を感じるから勘違いしてしまっているらしい。


でも……でもな。封印して徐々に力が弱まっているとはいえ、お前が支配するところは学校なんかじゃなくて、虜にするのは俺ごとき……私じゃないはずでしょ。


ああ。世界を滅ぼそうとしていたころの魔王が懐かしい。