0章
実を言うと自分は球遊びなんてしている場合ではなかった。
そんなことは解っている。
だが実際自分の立っている場所はどこだろう。
やっぱりコートだ。
昨年だってその前だって考えた。
だがやはり庭球から抜け出せなかった。
なんでだろう。今だって負けているじゃないか。
現在3-5、つまり僕たちのダウンで相手がサーブのモーションに入ろうとしている。
本当に負けているのか?負けてる気がしない。
テニスの世界では、小石くらいの小さなアクシデントであっても逆転のチャンスは訪れる。
いや小石より小さくたって大丈夫だ。
僕たちならひっくり返せる。
一瞬、風が吹いた。そしてネットの向こうではボールが放り上げられ叩かれた。