うのたろう
いやあ、おもしろいっ
ひさしぶりにとんでもないものを見た。
そんな感覚だ。
題材は専門的な単語を変換すればSFにもなり得るし、ちょっとした文学にも変身できる。
つまりそれはリアリティ。
すぐとなりにあって手をのばせばふれられる、そんな現実がこの物語のなかにはある。
剣と魔法でどんぱちやって、悪いドラゴンを倒してすかっとする。
そういったたぐいの話ではない。
人の心の物語だ。
旅人リュートと塔に住む守人の少年の出会いとわかれ。
そしてたがいの未来。
上質なファンタジー作品に対してあてはまる言葉かどうかはわからないが、どこまでも「粋」だ。
あとがきを読むとべつの物語のスピンオフ作品とのこと。
だが、そんな生やさしいものじゃない。
本編なしでもすべての説明が無理なくされており、われわれ読者を十二ぶんにたのしませてくれる。
読み終わったあとは冷静でなんかいられない。
とんでもない作品と出会い、胸が躍ってしまっている。
心のなかが大惨事だ。
声を大にして大賛辞の言をのべたくなってしまう。
ぜひ一度。
この物語を読むことをおすすめする。