栗栖ひよ子

トールキンのような、緻密だけど素朴な世界観
31ページという短編ながらも、内容がとても濃く、長編小説を読んだほどの充実感が味わえました!

文章は丁寧で繊細、作者のサチ様の豊富な語彙力、巧みな文章力が、余すことなく駆使されています。

世界樹、魔法、魔女、精霊、時計塔……。
ファンタジー好きにはたまらない要素がたくさん詰め込まれ、それぞれが見事に調和して、独自の世界観を作り上げています。

まるで、トールキンのファンタジーのような、海外の童話のような雰囲気。

図書館で見つけた、ハードカバーの素敵な洋書を、どきどきしながら読み進めている気分でした。

主人公・リュートの朗らかさと、謎の少年のミステリアスな雰囲気の対比が素晴らしかったです。

場所は塔から動いていないのに、こんなにワクワク、どきどきするファンタジー気分が味わえるなんて……。感嘆の一言です。

本編の番外編的な作品ということですが、この作品だけでも楽しめます。

でもきっと、伏線が気になって、本編を読み進めてしまうはず。

大人の方にもお勧めな、上質なファンタジー作品です。