私たち、子供を持っちゃダメですか? ~日本の生殖医療と産婦人科の冷たい現状~

作者サン

これが日本。偽善に一喜一憂した5000日の記録。 体外受精、生殖医療、産婦人科、大学、国外、渡航、精子バンク、性同一性障害、子作り、少子化対策

 体外受精は35歳を境に急激にその成功率を下げる―。


 莉子と葵が入籍したのは5年前。大恋愛の末結ばれた。しかし、結婚式は本来なら人生の絶頂になるべきところ、ふたりに完全なる幸福をもたらしはしなかった。多くの友人が祝福する晴れの日、互いの血縁は曇った顔でその日を過ごしたからだ。

 葵は「不妊症」である。

 莉子はそう解している。葵が自然に子供を授かることのできない障害を持って生まれたからだ。けれど、血縁は理解なく、葵を「ヘンタイ」と呼ぶ。また、それと入籍した莉子までをも・・・。


 ―性同一性障害。

 それが、葵の下された診断名である。医師が、国が、女性として生まれた葵を男性と認めた。しかし、認められた「はず」にしか過ぎないことは、ふたりだけが知っている。


 莉子32歳。葵33歳。タイムリミットまで時間は、ない。