ずーっと病室のベッドから動けない小さな小さな彼の、一番の楽しみは夜になって向かいのビルの窓に映る月を見る事だった。
満月、半月、悲しげな三日月と日々姿を変えて彼の目に、心に、小さな、そして大きな旅をくれた。
そんな彼に月の子供達が次々と現れる。
三日月の子ジュック、半月の子ペピーノ、満月の子キューネ、彼等との会話の中に本当に大切なモノを少しづつ知っていく。
命が大切な事と同じくらい、目に見えないものが本当に大切な事、目に見えるものなんかよりいっぱい大切な事を知って、遠い旅に出るんだ。
お父さんもお母さんもとっても悲しんでいるけど、彼が幸せだった事は、本当は二人が一番知っているもんね。
だからもう、僕の事で泣かないで。
ほら、月を見てよ、僕が、笑って、いるよ。
ね、ほら、ね。