突然、旅に出たいと思った。17歳、高校2年生の小林まゆみは一度読んだ少女漫画をもう一度読みながら、部屋のベッドに寝転がっている。
旅に出たい…。
一度その願望が生まれると、どうにも漫画の内容が頭に入ってこなくて、ただ絵と文字を追ってページをめくるだけになっていた。
机の上のデジタル時計は午後10時30分を表示している。漫画を閉じて、体を起こした。
階段を下りてリビングへ向かう。テレビがつきっぱなしで誰もいない。
廊下に出ると、ザパーと水の流れる音が聞こえた。
母はどうやらお風呂に入っているらしい。
まゆみはもう一度自分の部屋に戻って着替えを済ませると、家の裏口から外へ出た。
夜風に当たりながら暗闇の中で携帯電話を開くと、青白い光がまゆみの顔を照らす。新着メール1件という文字が表示された。
受信ボックスを開くとメールは同じクラスの矢本幸一からだった。