弥生

温かい心を
温かい気持ちになるとは,どういうことだろうか。
気が付いたら涙が目の上に貯まっている時とは,どういう時だろうか。

私は,この小説を読んでいるとき,上の二つの現象に本気で襲われた。


この小説に,風景描写は無いに等しい。全てが心理描写だけでうめられている。

弱い弱い主人公カロ,ただ一人の心だけで,この小説は成り立っていると言っても過言ではない。

だからこそ,稀に出てくる「表情」が,読み手の心を刺す。
そしてひたすら繰り返される「言葉」もまた然り。


主人公のカロはとても弱い。
弱いからこそ大切なものが必要で,それを探し求める。

主人公のカロはとても弱い。
弱いからこそ大切なものに気付くことが出来る。

あなたにとって,大切なものはなんですか?


レビューに留まっていないで,どうぞ表紙を開いて下さい。

私は16と27ページ目で,鼻の奥がいたくなってしまいました。