紅い空と水面

作者

昨日目が見えなくなった。








色も形もない世界。







聞こえるのは音だけ。






例え目を開けても真っ暗で苛立ちと安心が僕を飲み込んだ。

見たくない世界を見なくていい気持ちと見たくても見れないもう逢う事も話す事も出来ない君の顔。

一昨日まで見れた世界も今ではもう見れない。

最後に見たのは紅い空と水面だった。

車を運転しながら帰路に着く時に見た。

五体満足…。

当り前の様に思ってた五感が今では当り前ではなくなった。

手を伸ばしても何を触ったのかすら解らない。

絶望した。

その反面希望に似た物も感じた。

何もかも見なくてすむのだから。

その晩は眠れなかった。

明かりを付けても消しても何も感じない無音の世界。

頭がおかしくなりそうだった。