物心が付いた頃、甘えたい盛りのエミの周りには、エミと同い年くらいの幼児達五人との共同生活があり、一人のお母さん(保母)に我先に甘えようと駄々をこね欲するものの、たいがいはそれが叶わず、幼い心に諦めに似た感情を押し込める日々が続くエミ達施設児の幼き日々。


そう、ここは理由ある家庭の乳児から十五歳までの子供を預かり育てる養護施設「光り園」の中。

エミは生後間もなく母が他界し、十歳上の姉、恵子と共にこの施設に預けられたのである。

物心がはっきり付く五歳過ぎには姉、恵子は卒園した後で、姉がいるといえども、施設で一人ぼっちのエミ。

しかも姉と自分とは父が異なり、自分の父は子供を施設に預けてからの数年後、肺結核病棟での療養生活を過ごし、闘病のうちに亡くなっていた。