NAO

痛々しいほどの渇望
『渇いている』
短いストーリーの中にも、常に強烈な渇きを感じさせられました。
主人公雅人の、多感な高校生らしい欲求と真っ直ぐに好きな人に向かう気持ち。熱すぎるほどの情熱。
自分より少し年上の彼女は、雅人の想いに対してどこか冷静で、一線を引いていたのではないでしょうか。
同じ温度になりたい。少しでも自分と同じくらい熱くなって欲しい。理性を失うほど求めて欲しい。
その純粋な渇望が彼女を壊れるほどに抱くという行為に繋がったと思います。
けれど、彼女は、どれだけ情熱的に抱かれても、やっぱり自分を失うことはなかった。
残酷なほどに、二人の間の温度差が露呈した場面がありました。
あの場面が、決定的な失恋であり、諦めを決意したきっかけだと思います。
一見すると、アバンチュールな浮気の話のように感じますが、そこには、思春期の男の子の貪欲な想いが巧みに描写されており、読み終わった時には、十代特有の焦燥感を味わわされました。