むにえな
屋上の逃げ水
周りの喧騒がない世界。
屋上の開放さと、何もないゆえの希薄さ――そこが屋上ということも分からないほどの。
最初は暑さが強調されていましたけど、屋上ではそれも感じなくなる。
さらりとした触れあいが、それでもふたりの気持ちが重なったこと、だけど触れ合いに絡まれてはいけないことを示しているようです。
序盤の晃との会話から、ハルが地縛霊のようなものだと思ったので、ストーリーは脇道もなく収まるところに進んでいくように思えました。
ハルとナツがどのくらいまで思い合っていたのかが分からないので、そのふたりの会話はあっさりと感じました。
文句を言いながらも――同時にそれは心配の言葉である――ナツに付き合う晃が、私は好きです。
状況を知り、ナツのこだわりにも思い馳せ、それらを茶化すのではなく重苦しくならない会話にする――よい友人。
ハルの飛び降りに、最初はストーリー上の大きな意味合いを期待していました。
そうしてまで伝えたい執念があるのか、と。
イベントの起伏というよりは、近づききれない夏の陽炎のイメージが行動となったように受け取ることができ、これもまた良かったです。