私は彼の目を見ると、どうしようもなくなる。
彼には俐幸がいるのに。
去年、諦めたはずなのに。
彼の目を見ると、すべてが曖昧になる。
私には俐幸を捨てられないのに……。
──鈴歌(すずか)は、俐幸(りこ)を捨てられない。
──その理由を分かっていながら、鈴歌はそれから目を逸らす。
──でも彼に溺れていってしまう自分を抑えられない、鈴歌。
私は俐幸を捨てられないのに、彼が好き。
彼は俐幸の婚約者なのに。
自分が嫌。
どうすればいいの?
──鈴歌が俐幸を捨てられないのは、鈴歌の過去に理由があった。
──それには“彼”こと、彼女たちの幼馴染の光樹が絡んでいて。