うのたろう

人は変われる、いつまでも、どこまでも
主人公・修一は定時制の高校に通う十七歳。

家庭の事情や本人の心の未熟さから、お世辞にも優等生という感じではない。

そんな修一は登校中駅のホームでぐうぜん出会った奈々子とつきあうことになる。

この作品のテーマは「人は変われる」。

そんな希望にあふれた強いメッセージがこめられている。

この作品のすごいところは「修一が奈々子と出会いいい方向に変わった、まる」で終わらないところだ。

一貫したテーマが複雑な人間模様を織りなしている。

変わったのは修一だけではない。

修一と出会うことで奈々子も、いい方向に変わった。

そして修一の友人・優也も。

結末はかなしい物語だ。

けれど、読後感は不思議とさみしくない。

それは修一が奈々子をうしない、おとなになってさらにもう一段階変わったという事実がそう思わせているのだろうと思う。

奈々子は死んだ。
殺された。

だが。
奈々子は10年後の修一のなかで笑っている。

修一が出会ったころ惚れたような、えくぼを頬にたずさえて。

わずかな救いに、未来への希望が見えるようだ。