久遠マリ

彼が見た鮮やかな世界
画面の中から言葉を拾うだけで眼前に広がる、暗く不気味な墓地や夏の日の道路。聴こえてくる蝉の声、鼻腔に届くアスファルトの匂い。
読み進めページを捲るその度に、誰かに向かって手を伸ばしたくなるような切なさが沸き上がってきます。

短編ながらしっかり纏まった秀作だと感じられました。
人の強い想いが痛いほどに、涙を流さずにはいられない程に伝わってきます。


冬の入り口に立っているのに、暑さの中に佇んでいるような気がしました。