周泰
素晴らしい文才
小説を読みつけた私も、最近ここまで良く出来た話を読んだ記憶がない。
文章から薫り立つフレーバーはどことなく村山由香を感じさせる。
女性ならではの感性と繊細で瑞々しい文章 …
この作品は2つの極みにある「村山由香」の高さに到達するのでは?と恐れを抱かずにはいられない。
いや、死して尚消えぬ想いを、犬の体に宿り昇華させるとは発想は乙一氏を彷彿とさせる。
筆者は「乙一の発想で書く村山由香」とでもいったところであろうか?
作中で周泰が心を奪われたフレーズがある。
[空虚な絶望の真ん中で「清香」
口を突いて出たのは、彼女の名だった]
この小説を象徴するかのようなフレーズだが、これがすごい。
普通の恋愛物ならば、
「なんと過剰な表現だろうか?」
と思うのであろうが、
主人公は本当に死んでいるのだ。
本物の空虚な絶望の中… 愛しい幼なじみの名を呼んだのだ。
大人になり、黒づみ始めた私の心を、落ち着かなくなるほど軽くしたフレーズだ。
皆さんもこの「夏眠」を読んで、落ち着かなくなるほど心を軽くしてみてはいかがだろうか?
癖になる清々しさと、私が保証する。