冬の寒さを忘れさせる程の強い日差しが、まだ2月の初旬
の駅のホームに注がれている。
門脇幸次郎(21歳)は良く晴れた抜けるような青空をホームから
眺めていた。
駅のアナウンスが流れ、電車がホームに入ってくるのを知らせていた。
遠くから、電車の音が聞こえて来た。
音の本体も見えて来た。
門脇幸次郎は電車に乗り込むために矢印の所に並んだ。
いつもなら、ホームの中ほどの階段の近くに並ぶのだが、
今日は、ゼミも無いので、早くに大学に行く必要が無い。
そう、何の気なしに「偶には最後尾の車両に乗ってみよう」と思い立ち
ホームの一番はしに立っていたのだった。
直ぐそばに、20代後半か30半ばの女性が立っていた。