凪いだ海が、波音をそっと潮風に織り込ませている。力の篭らない瞼は半分閉じ、視界の端がぼやけ、その中では淡い青が光を跳ねていた。眼下を臨む海は引力を持ち、岬の高台に腰掛ける私を絶え間なく誘い寄せる。それに反発するように、私は潮風に晒されてごつごつと風化した一枚岩に背を預けている。岩に感情はない。ただ、そこにあるだけだ。