淡い月の光が暗い色を帯びて蠢く海面に反射し、粘つくように私に絡まる。

ざらざらと。


貧弱な音で悲鳴をあげるスクーターのエンジンは今にも弾け飛んでしまいそうなのに、スピードメーターは60k/hにも届かない。


やや強めに耳を撫でる風音の向こうで唸る波音が私を遠ざけようとする。


それとも、月の光と共に私を誘いこもうとしているのだろうか。


不可解な胸のざわめきが一気に私の自由を奪った。スロットルを握る右手が海岸のほうへ傾いでいく―――――