東京の最西端で埼玉と山梨に隣接する辺境に、風化した造成地がある。

 最寄りの駅まで車で三十分、そこから都心まで一時間半というこの地帯にもバブルの指先は届いたが、一戸建てを求める者が移り住むまでには至らず、そのうち、不景気と都市部の再開発に飲まれてモデルハウスを含めた数戸がまばらに点在するに留まった。

 今では損壊からの治癒を許された森が、再びここ一帯を漆黒に染めようと造成地を侵食しはじめている。