誤差丸

「携帯小説」としては理想的
いきなりですが、ストーリーはどこか曖昧な気がします。何がしかメッセージを発したいのか、読み手を震え上がらせたいのか、どっち付かずのように思えるストーリーが少々気になりました。
個人的な意見かもしれませんが、こういったタイプの話は「恐怖」を逆接的に「メッセージ」に出来ないと、正直きついかもしれないです。ホラーはある意味、エネルギーの「一点集中」だと思うのです。それを成立させるための諸々の細部の描写も必要ですね。

しかし。「携帯小説」というスタイルを大胆に利用してみたことは、称賛に値すると思います。事実、頁めくりのボタンをクリックする手はなかなか止まりませんでした。その点では戦略で勝利しているとも言えます。
この作品を書いたことによって「携帯小説」の利点や欠点も色々把握できたでしょうし、これは次回作に至る大きな果実ではないでしょうか。実験なくして進歩は得られず、です。
実験精神に満ちた意欲作ですね。