錬徒利広

概念に訴えかける、清楚なおはなし
まず、文体が非常にキレイです。その上に、清冽な物語の流れができあがる。読んでいて疲れません。
そして「不幸の概念」という、私たちが持ちがちな負のイメージを徐々に歪曲させ、崩していく。
とくに、「どうしようもならなくなった」という冒頭部分は、非常に共感できる部分があります。
そしてその「負の概念」を砕いていく様も、決してとってつけたように粗悪ではない。人間的な感情の揺れを伴って、一番自然な形で捻じ曲げていくのです。


あと一つだけ注文をつけさせていただくと、終わり方です。
最後に「努力して前向きに生きる」と誓いますが、果たして本当に困難に陥った時、その一言がすぐ出てくるでしょうか?
人によってそれぞれかもしれませんが、もう少し「努力するのを誓う」というシーンを負に傾けることができれば、自然なラストになっていたかなと思います。
ですがそれ以外どれをとっても欠点がなく、星は四つです。読んでよかった。