60秒で読めるラブショートストリー

作者空回りの夏の日

           Venus





「一番星みつけた」彼女はまるで童心に帰ったように叫んだ。

長崎の日も暮れかけた空と彼女の無頓着な横顔が喧騒たる都会の生活がまるで幻のように思い出される。


〈中略〉


彼女はいつもいつもの彼女でいてくれた。

金星は太陽が西の空にくれ沈む頃、一番初めに輝きだし、月の光ほど鮮明ではないにしろ、この夜を見守るかのようにそっと照らしてくれる。

そして朝日が昇り空が白止むまで輝き続けるのだ。



『一番星みつけた』彼女の言葉は僕の気持ちを代弁しているのかも知れない。