時給890円女とメロンパン男

作者香住シズク

皆と視点がずれる女×メロンパン男×幼なじみ男の物語。
「ちょ、何この説明!」
「うっせぇ、馬鹿…んだよ、メロンパン男って」
「…俺、普通で逆に目立つんだけど」


漂うパンの香ばしい香りに誘われて



やってくる客は数知れず。




小さな鈴をぶら下げた木製の扉をゆっくり開けて

今日もあの人はやってくる。





…あの、傷が増えてませんか?



頬に絆創膏


少し癖のある茶髪


被っているフード




いつものブースに颯爽と歩を進め


トレーにいつものパンを乗せて



レジに持ってくる姿を、何度見ただろうか



「120円になります。」




そして、私はパンの代金を頂戴する。



容姿とまったく似合わないメロンパンを買う男と



時給890円のパン屋で働く女の


恋の物語りのはじまり、はじまり。









甘い薫りのする貴方から


離れるのは


もう、無理かもしれない。