繭結理央
傀儡
風情があるので、ロリータ調の好きな子はゾクゾクしつつ読めるかも知れない。が、最後まで“あたち”の齢がわからず、でもまったくわからないわけでもなく、つまり彼女の口調と伏線との違和感に怯えながら読むことになる。
終いには、彼女が人間である可能性さえも排されてしまうんだからホラーって厄介。ある意味、なんでもアリが適用されるのもホラーの持ち味で、ズルいとも思えたり。
きっと、長篇でもイケそうな物語。でも、これぐらいの長さでも充分か。謎が深まるぐらいで丁度いいのも、ホラーの持ち味。
ホラーの読者は、必ず、この持ち味に翻弄される。すっかり踊らされる。それもまた優秀なカタルシスで、カタルシスが明瞭なぶん、愛好家の目が肥えていたりもする。
この作品は、ホラー愛好家には“易しい”かも知れない。だが、馴染みのない人には申し分のないテキストだし、ポップな風情なので要らぬ警戒心を抱かなくてもいい。
……踊らされると思うけどね。
“あたち”の嬉しそうな顔が浮かぶよう。だって彼女にとっては、読者こそが一番の“傀儡(くぐつ)”なんだもん。