現実逃避。15歳。二人は家出の計画をたてる。父親の都合で転校をした15歳少女と転校先の男子生徒との夏休みの刹那。

 市内の中心地からローカル線で南下すること1時間半。

 無人駅を何個も通り過ぎると”大門”という駅がある。

 その駅から三〇分くらい歩いたところに、こぢんまりとした神社があった。鳥居の高さが一〇メートルはあって、ちょっとした町の名所となっていた。

 七夕の時にはここから御輿がかつがれ、市内へ延々と人の行列を作る。夜通し行われるこの祭りは、全国的に知られている有名な行事だった。

 そしてそこを中心とした町を、昔から土地の人たちは”大門”の町と呼んでいた。

 “大門”の町に毎年定期的に訪れるようになってから、もう三〇年近くたったろうか…

 今年も蝉の大合唱が私を迎えてくれた。

 毎年訪れる墓標の前は今年もきれいに片付いていた。

 私はいつものように両手を墓標の前で静かに合わせた。