市内の中心地からローカル線で南下すること1時間半。
無人駅を何個も通り過ぎると”大門”という駅がある。
その駅から三〇分くらい歩いたところに、こぢんまりとした神社があった。鳥居の高さが一〇メートルはあって、ちょっとした町の名所となっていた。
七夕の時にはここから御輿がかつがれ、市内へ延々と人の行列を作る。夜通し行われるこの祭りは、全国的に知られている有名な行事だった。
そしてそこを中心とした町を、昔から土地の人たちは”大門”の町と呼んでいた。
“大門”の町に毎年定期的に訪れるようになってから、もう三〇年近くたったろうか…
今年も蝉の大合唱が私を迎えてくれた。
毎年訪れる墓標の前は今年もきれいに片付いていた。
私はいつものように両手を墓標の前で静かに合わせた。