風碧 蒼(かざみどり あお)

稀に見る名作
読み終えた瞬間、思わずため息が出た。


言うまでもなく、この作品が素晴らしかったからだ。


大人の為の童話とでも定義すべきかもしれない。



持ち主の愛情によって次第に成長し、学習してゆく生きた人形―ドール。


一部の金持ちの愛玩用の非常に高価な人形。


ドールたちは主人を選べない。


彼女たちは買われ、可愛がられて成長し、飽きられ、最後は店に返品される。


返品されたドールからはその命である目が抜き取られて安置される。


目のないドールたちが並ぶ店の片隅にある、瞳を閉じた一体。


彼女は、自分の意志で主人を選ぶ特別な存在だった。

自分の主人を認めた時、彼女は初めてその閉じた瞼を開く。


その色は、美しい蒼。




これは彼女と彼女が選んだ主人の、現代社会への風刺とも言える悲しい愛の物語。

変わりゆくモノと変わらないモノの残酷な対比が見事に描かれています。

久しぶりに凄い作品に出会いました。