うのたろう

「いやあっ、いいっ」
この作品を読み終わったあとに自然にもれたすなおな感想だ。

「おもしろい」じゃない。
「いい」のだ。

それも最上級。
有無をいわさず「いい」小説。

ジャンルは純文学。
堂々とした文体に、たしかな文章力。
そして膨大な語彙力。
比喩表現も秀逸だ。

夜中にとんでもないものを読んでしまった。そんな感覚だった。

主人公・結子は両親の離婚が原因で、夏休みのあいだだけ祖母の田舎にあずけられる。

彼女は声をうしなってしまっている。

そんな結子のまえにあらわれた地元の男女3人組。

結子はすぐにその3人とうちとけて……

言葉にすると簡単だが、この内容を物語のなかでじょじょに読者に見せてくる。

それもただ見せるだけじゃない。
予想をさせたうえで、そのあとに見せるのだ。
この技術はすばらしい。
読書の醍醐味は、こういうところにある。

主人公・結子のひと夏のできごと。
この作品は読んで絶対損はない。

まだまだ書きたりないことはあるが。
続きはこの作品を読み、おのおのの目でたのしむことをオススメする。

良作である。