小泉秋歩

記憶が嘘をつく
そう遠くない未来の日本。
国民ひとりひとりの情報は、戸籍から病歴に至るまで全て「登録所」で管理され、IDがなければ社会生活は営めない状況。
そして、ほとんどの人間は免疫系の病気に罹患しており、重度のアレルギー症状(アナフィラキシー)で死に至る人間も多い――

ある日、記憶障害の少女・桐生は、記憶喪失の青年と出会う。
2人は、なぜ自分達が共に行動しようとするのか、その理由も分からぬまま、記憶を取り戻すために動き出す。
その中で少しずつ取り戻す恐ろしい記憶。
何かを隠しているらしい桐生の両親。
そして、「女神」の夢――

物語の序盤、2人が持っている記憶はとても曖昧で、何が真実で、何が嘘なのかすら分かりません。
まるで闇の中を手探りで歩くような心細い感じで、読者を惑わせます。
ただ、何かの陰謀が背後でうごめいている感じが常につきまとうため、いったん読み始めたらなかなか中断できません。

2人が最後に直面する真実はあまりにも苛酷で、そして美しく――

たいへん良質のミステリーです。ぜひ一度お読みください。