失くした心

作者ひ。

彼を救えるのは私じゃないの。貴方だけなの。ねぇ、お願いします。彼のそばにいてください。



「何も感じないんですよ」


 彼が悲しく笑った。


「何で?」


 私は、訊いてはいけないことを訊いてしまったようだ。


 彼は、小さく口許に笑みを作る。


 そして、ゆっくりと優しく言葉を口にする。


「きっと大切なものを失くしたからですよ」