少年は”特別”に憧れた。特別でありたいと願った。己が特別を疑わなかった。特別の怖さを知った時、少年は元の世界へと帰る。

ファンタジーを忘れるファンタジー第三弾

例えば、旅行中に乗り合わせた船が停まり、沈没しかけているとしよう。


脱出可能なボートが一つある。


乗り込める人数は限られている。全員は乗り込めないとする。


あなたならどうしますか?





 声が聞こえる。

 名前を呼ぶ、声が聞こえるんだ。


 名前を呼ぶ声が。


 *


「あなたはそれを力だと言うの!?」


「そうだ。 これが秘宝の力」


「させない! 私たちが止めます!」


「ならば来るといい。 破滅の地で君たちを待とう」


「もちろん追うのでしょ!?」


「…」


「聞こえてる? ねぇ? リオン!」


 *


 声が聞こえる。


 もういいよ。もう追わなくていいよって。 


 声が、


 聞こえるんだ。






※本bookの内容は、「Grade Battlers EpisodeⅠ・Ⅱ」を前提に書かれています。本bookを読まれる前に前章を読まれることをお勧めします。以後の更新は不定期となります。