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言葉が聴こえる物語
前編から後編のレビューまでかなり時間がかかりました。

『chair』という題名を鵜呑みにして登場人物それぞれの居場所を見つける物語であり、その過程で物語の随所に流れるピアノの音色がアクセントと深みを演出していると思っていましたが【後篇・完】を読み終えキャラたちがその時々で探し求めていたchairと
いうのは、もがき苦しんで見つけ出す『居場所』ではなく、最初からそこに座ることが決まっていた場所に

『自分が決めた場所に座れるか、自分で決められるかどうか』を酷なほど突きつけられることが人生なんじゃないか? という思いがしました。


明確な言葉を紡がないピアノの音色に乗せてそれぞれが思うコトバが積み重ねられていく季節。過ぎ去るのは一瞬だが、積み重なった時間は限りなく重い。
この物語では見事なまでに時間が、思いが、鮮やかな絵画と音楽によって成就されていきます。

今いる場所に、思いを馳せるのも悪くない。


そんな作品に出会えたのは、ありがたいです。