朝海 颯妃
奏でられる美しい旋律
まるでオペラを観劇した後のような…そんな余韻を感じました。
過去と現在を行き来する展開にもかかわらず、読んでいて何の違和感もなく、作品の世界にぐいぐい引き込まれていきます。
さらに、表現力の巧みさが秀逸で、人物達の感情や、ふとした日常の風景、色、音など、繊細で尚且つ、独創的な言葉で綴られていて、そのリズムや雰囲気が何とも心地良いです。
節々に入る写真や、作中に登場する数々のクラシック音楽も素敵で、物語にさらに彩りを添えています。
さらに、キャラクター、一人一人がきちんと立っていて、とても魅力的です。
そして、彼女らが繰り広げる様々な心模様―。
恋愛の「甘い」一面だけじゃなく、「苦い」部分や「暗い」一面も描く事によって、「甘さ」がより際立ち、彼女達の心情をとてもリアルに、そして身近なものとして感じる事が出来ました。
主人公の春娜が、色々な葛藤を経ながらも、少しずつ自分と向き合い、秋留に向き合って「自分の居場所」を掴み取ろうとする姿には、たくさんの勇気を貰えました。
最後に、「恋愛小説」というジャンルを超えた素晴らしい作品だと思います。