高校二年生の繭は年齢を偽りキャバクラでバイトをしていた。ある夜、繭を指名したいという男が来店する。不審に思いながらも席に着くと、彼は繭が米国で手術を受けた時に出会った研修医の常盤だった。今は医者となり日本で働いている彼は、偶然店の前で見かけた繭の姿に驚き、辞めるよう説得しに来たのだ。しかし母親と二人で暮らす家に帰るのが嫌な繭は言うことを聞かない。
明るい少女だった彼女の変貌ぶりに常盤は戸惑いつつも、次第に彼女が抱える闇を知っていく。そしてそれぞれの人へと向けられた愛情が、黒い渦のように繭を飲み込んでいく。
「先生、愛はどこにありますか?」
これは愛情か同情かーー知りたくて、キスをした。