出会いは、日向が十二歳、沙耶が四歳の時だった。
「寂しいなら、呼べばいい。隣にいるんだから」
そう言ってくれた日向は、いつでも沙耶の心の拠り所だった。
けれど、八つの歳の差は、七歳の沙耶の心を打ち砕く。そして起こした、狂言誘拐事件。
沙耶のクラスメイトの奏。体と心の性別が違う奏の秘密を知った沙耶は、その秘密を盾に奏に協力を要求して、誘拐を装った日向との逃避行を企てる。
その出来事が、二人の『傷』になったのか、あるいは『絆』になったのか。
また、沙耶と奏も、その事件がきっかけで切っても切れない縁が、そこにあるのだろうと思わざるを得ないくらい、悩んだとき、困ったときにはお互いがそこにいるのだ。友達だなんて、絶対に言わないけど。
二十年という時間をじっくりかけて、ちょっとずつ、進んでは立ち止まり、を繰り返し、行きつく場所。
是非、見届けてください。