東京近郊の私立高校生、歩武(あゆむ)は演劇部副長である。千葉南端に先祖代々の墓があり、先年物故した祖父の遺言で、廃寺跡のその墓と、特に裏手の藪「いかづち窪」を守っている。そして墓参りのたびにしばし彼は気を失い、そのあと奇妙な夢を見るのだった。
ある日お墓の周りで幽霊騒動が起きる。父に頼まれ様子を見に行った歩武は、いかづち窪で兵士の「幽霊」を見てしまう。驚き窪地の藪に踏み込むと、突如時空が歪んでしまった。気が付くと彼は戦地の荒野にいた。沖の巨大戦艦から、巨人ロボット兵士が現れ、なにかと戦っている。パニックになった歩武は逃げ出すが、途中で破壊された神社の石碑をみつけ、ここが墓のある千葉南部であることを知る。呆然とした彼を救ったのは、亜子と言う看護兵の少女だった。そして歩武の前に、彼のことを「軍曹」と呼ぶ纐纈(こうけつ)大尉が出現する。呆然とする歩武は、最前線陣地で事情を説明される。ここは彼の時代から百年以上あとの日本で、一割にまで減った世界人類が一丸となって、自らを遺伝子改造した超人類ユーバーメンシェンと戦っていた。ロボットに見えたのは敵の乗る兵器だった。大尉は歩武が、かつてここに来たと言う。当然彼には覚えがないが、確かに夢でこの光景を覚えていた。
やがて司令部から後退命令が出て、歩武は看護兵の亜子とともに後方へ下がる。しかし敵「巨人」に接近されパニックになった歩武は、慌て逃げ出す。敵巨人が迫ると、亜子は帽子を脱ぎ、自分が女であることをしめす。すると機械の巨人は亜子を拉致し、水陸両用艇へと去った。歩武を助けた纐纈は語る。彼らユーバーメンシェンは遺伝子改造の結果、子孫を残せなくなっている。故に若い女性を拉致し、人工授精させると言うのだ。自らの行為を恥じた歩武は、纐纈と共に亜子救済にむかう。水陸両用巨大装甲艇に乗り込んだ二人は、機械巨人の中が老人であることを知る。なんとか亜子たち誘拐された女性を救出し、脱出ポッドに乗ったが、歩武だけ撃たれてしまう。歩武は苦しみの中で「逃げて」と叫び、巨艇の爆発に巻き込まれる。
気が付くと歩武は、元のいかづち窪にいた。数分ほど気を失っていたらしい。戦いの凡ての記憶は消えていた。この時代の人間である歩武が未来で死ぬと、タイムパラドックスを避ける為に元の時間に飛ばされるのだ。こうして日常を取り戻した歩武は、しばし夢に可憐な少女兵を見る。そして何度も、なにかに誘われるように「いかづち窪」へと赴くのだった。