【作品のねらい】
古来、日本人は一木一草にも魂が宿ると知っていた。現在でもようやく樹木たちには知性があり、情報のネットワーク能力があることがようやく解明されはじめた。だがしかし、すでに容赦ない土地開発、伐採、ダム建設などで屍となっていく樹木の危機は、生態系と土壌環境を損ない、大災害、気候変動を引き起こし、このままでは、互いに酸素と二酸化炭素を供給しあっている運命共同体の人間と樹木は共に滅んでしまう!!
そのことを知る樹木たちが、さまざまなサインを人間に送り警告を発しても、かつて共に生きていた記憶、をすっかり忘れて経済と物質開発を第一とするようになった人間には届かない。追い詰められた樹々たちは、ネットワークを駆使して、彼らと人の間をとりもつ役目として、ひとりの男。かつて鎮守の森を守るために戦った、天才、紀州の『南方熊楠』に白羽の矢を立てて託す。・・・エコロジーの先駆者としての彼への関心が高まり、注目されている傾向にさらに拍車をかけ、いのちの基本と多様性、すべてのいきもののつながりの大切さを普及させるのがねらいのこの作品は、熊楠の脳が実は、本人の希望で解剖され、いまでも関西のある大学の研究室に保存されていることにも触発され、甦った脳が時空を超えて、粘菌や地衣類などを操り、人間たちの目を覚まさせる壮大な知と愛のストーリーにと発展させる。
【みどころ】
脳が空中に浮かんでいるシーンなど、視覚的にコミックが効果的。脳の指令により粘菌や苔が、開発重機やダムにはびこり操作不能にしていくシーンもリアルに展開。そして、熊楠の脳の知の面だけでなく、最終的に、熊楠と、精神の病を背負った彼の最愛の長男熊弥との苦しみのドラマをも、ストーリーのなかで、「因果と縁」の起こす愛の面として昇華させて、熊楠氏への敬意と感謝と父子への鎮魂とにしたい。先ごろ他界し植樹に生涯を尽くされた宮脇昭氏、紀州の樹木の一族”名草卜ベ”などもモデルのキャラクターにして光を当て、地球再生に向けた時空を超えたストーリーに。
登場人物
【主人公 太田みわ(23)】
山や森、植物が好きで各地でリゾートバイトをしながら写真を撮って廻る。
特に巨木、古木が好きで樟フェチ。黒髪のおかっぱで引き立つ瞳、エキゾチックな顔立ち。明るく素直。背も低く声も可愛いので幼くみられる。楠の樹に感じるときめきを越えるほどの男子に巡り合えず、彼氏なし。市民講座で参加したS大学の脇坂の講座にすっかり傾倒しその植樹グループに入る。実は本人は知らされておらず自覚はないが、太古から樹木を崇め守ってきた紀州の一族の血を引く子孫で、甦った熊楠の脳が、自分と同調できる肉体を持った存在としてみわをみつけたために、脳からのメッセージを通訳したり、樹木たちの危機を食い止めるために奔走することになる。
【サブ KUMAGUSU(脳)】
かつて狂人扱いもされたことがある、いまでは「知の巨人」と呼ばれる紀州の天才、南方熊楠の眠れる脳。滅亡を迫られている森林、樹木たちの呼びかけにより目覚めさせられる。極微の存在、粘菌や地衣類、から膨大なる宇宙とまで交信。
【脇坂守 (75)】
生物学博士。国立S大学名誉教授。国際環境センター日本支部長。ヨーロッパと日本
で生態学と環境学を教えている。常に在野の人であり自らも植樹の実践者。学者としてはやや異端。頭だけは禿げ上がっているが、色黒、ガテン系の体格、70を越えても尚現役で生態系の保存のために奔走している。 若手植樹ボランティアグループで活動しているみわにも目をかけ、よき理解者となる。みわが託された使命をたわごとと思わず、学者生命をかけて関係各所に繋ぎ尽力する。
【フーツ
木村 高士(39)】
本業は熊野の木彫りランプ作家。ふとしたことから目鼻のついた不思議な”木魂“や妖精が写真に映るようになり、フーツ(ワタリガラス)という名で写真展を開き、みわと知り合う。やがて、みわの巻き込まれた出来事に手を貸す。いつも毛糸の帽子を被り作務衣を着ておっとりヤワに見えるが頼りになる合気道有段者。
【みわの祖母 やすえ(80)】
遥か古代に樹木を神とし、神事や植樹を行っていた一族の末裔。理由があって出身を伏せて嫁に来ていた。80といえども身も軽く、頭も優れ、シャーマンのごとき風貌。
みわに古代の秘儀と知恵を授ける。
【みわの父 聡(57)】
みわの母である連れ合いをなくしてからずっと独り身だったが、みわが高校を卒業の時再婚。みわが家を出るきっかけとなった。みわに出ていかれたことで傷ついている。
【林 雅彦】
宮内庁付き特別任務官。むっつり感じ悪い三つ揃いスーツのおやじ。
ひそかに企まれ動いている政府の一部や悪徳役人たちの森林や山の売買の実態を、内側に入り込み見張っている。当初はみわや脇坂を阻む存在と思われたが、最後に逆転する。
【クマヤの声とシルエット】
かつて精神を病んだままになり、熊楠の悲しみとなった最愛の長男熊弥の他次元の存在となったタマシイ。 人間の堕落ぶりに怒りと悲しみから修羅となった父熊楠の脳を諭し、救う。
あらすじ
(1話から6話分)
-プロローグ
(我々は「あの方」であり、「あの方」は我々だ。我々の思うことが「あの方」を生み出し
「あの方」の思うことが我々を生み出す では「あの方」は誰だ 我々は誰なのだ)
すべての樹木は ネットワークで結ばれている。人の脳のシナプスのように樹木の根は地中を行き交う。いま樹木たちは危機に瀕している。彼らとヒトはこの星を共にしどちらかが滅びれば共滅する。 しかし、そのことを忘れ果ててしまい、愚かな経済的理由だけで伐採を続け森を減らすヒトに、最期の時が近づく危機を警告しようと様々にサインを送ってきても届かず、樹木たちはは思い出した。かつて自分たちの仲間を守った男。今はもうただ滾々と眠るだけの、知の巨人の脳。
樹々だけでなく、自由自在に動くこともでき、宇宙間の情報も交信できる、極微の存在、地衣類や、粘菌とさえ通じることのできた男のことを。紀州の南方熊楠。 次々と切り倒される鎮守の森の樹々たちの声に突き動かされて反対運動をして投獄されてもなお、われらが今も首領とする巨木たちを守り、神島のタブの木を愛した男。常軌を越える集中力と記憶力による研究を残した彼の巨大な脳は実は本人の希望で解剖されたのち、いまは保存されて眠る。「起きよ。起きてくれ。我らの声を聞き取り我らとヒトを繋いで欲しいのだ」。ー眠れる熊楠の脳に向けて樹々の発信が始まる。
雷鳴と共にいきなり、すべての灯りが消えたK大学。ブレーカーには異常はない。住宅街も他の建物も停電はしていない。
一階の教室でパワポに映し出された言葉をノートに書き写している太田みわも、突然パワポが消えて声を発した。
『私たちが本に囲まれた部屋で苦しくなくなぜか落ち着くのは、本が元は木だったから。本は木からできていて、木は元は私たちの兄弟だったから。プラスティックではなく、生きて呼吸をしているから』・・・感動に息をつめて書き写していたのに。植物生態学の学者の中でも変わり者と呼ばれてきた脇坂博士の、k大学主催シンポジウム週間の講演会場。「どうやら停電のようですね」「仕方ない」と質問タイムになり、思い切って手を挙げたみわの期待通り、脇坂の樹木への想いは的を得て素晴らしかった。早速、脇坂の植樹研究グループのボランティア会員に登録して、みわの活動がはじまった。
―異変
停電の翌日から、各地でおかしな現象が起きはじめていった。
全国の開発現場の重機がおかしくなり、動かなくなることによって、宅地造成のための山の切り崩しなどができなくなった。川崎での、化学肥料工場の夜間の火事を皮切りに、千葉でも埼玉でも、化学肥料倉庫や工場の火事や爆発が相次いだ。
しかもこれらはみな、被害者が出ないよう、だれかが考えたとしか思えないようなタイミング、状況で起きていった。なぜこんなことが起こるのか。なぜ、開発現場だけなのか。なぜ、化学肥料工場だけなのか。
一方、異変は、気づかれることなく、K大の地下。資料保管庫の厳重な扉の内側でも起きていた。80年という歳月止まっていたはずのガラス管の中の”あの脳”が、落雷の日のスパーク、火と水のエネルギーの後、静かに脈打ち始め、やがてシナプスからシナプスへと遠く各地の巨木から届くメッセージに目覚めていった。歳月を経て目覚めた脳は、地球の状況のひどさを驚き、嘆く。どこにでも動き、瞬時に姿を変えられる粘菌類たちに指示を送り、加速する開発地域を食い止めるが、人間達は、ただ異常繁殖する苔や菌を撲滅るために手を尽くすばかりだった。すさまじいスピードで増殖して、すさまじいスピードで消滅させられていく菌たち。やがて、菌たちの中には、混乱しはじめ、動きに変化が生じるものが出始める。
脳からの指令では、有害なもの、差し止めるものは、重機や工場機械なのだが、我々を躊躇なく皆殺しする、あの、二本足のヒト類は、差し止めるべきものではないのかと。あれらは、このホシの有害物ではないのだろうかと。今のやり方で、ヒト達が菌を撲滅を図り続ければ、菌達がどんな認識をもち、やがて誤作動を起こさないという保障はない。
やはり、どうしても、言語にして事態を伝える人間の介在が、肉体を持つ通訳が必要だ。甦った脳は考える。
だが、誰が、誰を、そんな、自分との橋渡しにできるのだろうか。
あの日の講演会での質問がきっかけとなり、脇坂の植樹研究グループで毎日活動するみわ。ダムができてから倒木が増えた山の斜面の土壌の調査を終えて頂上に登り、下を見下ろしているとき聞いた突然の「飛べ!」というハッキリとした不思議な声の謎と、祖父の13回目の法要で姫路の実家への帰省した際に初めて聞かされた祖母のルーツである和歌山のイタキソという神社にまつわる古代民族の”なぐさとべとが関りがあるのではないかと、和歌山をめざす。飛べ!は戸部だった??
どうせ和歌山にいくなら熊野古道もと、その一番となる藤代神社のある、海南という駅に降り立つみわ。そこから初めて訪れた藤代神社は、入口から見事な大楠。思わず、さらに鳥居の向こうにも大楠の枝が張り出している。立札には、子供や安産を守る楠であり、親たちは縁起がよいこの楠のように立派になるようにと、生まれた子の名前に楠の字をもらって付けたという。そのうちの著名人には紀州が生んだ世界的学者、南方熊楠があると書かれていた。参拝を終えて宿に向かうと宿のある商店街のギャラリー店で「木魂写真展」というのに出会う。大きく引き伸ばされてパネルになっている樹木の写真にはまるでジブリのアニメ映画のように、目も鼻もあるまあるい白いものがビッシリと写り込んでいる。フーツ、と名乗る写真家木村は、正真正銘、写ったものは本物で、自分でもなぜこれが映るかわからないという。みわは自分も、どうやらルーツの片側が和歌山らしいことと、趣味で樹木の写真を撮っていることを告げると、そのフーツ、こと木村という男は俄然親しみを持っていろいろ話し出した。木霊の写真を自分も撮ってみたいというみわを、翌日、那智の二の滝の禁足地へと誘う木村。
朝方の雨の後で、一の滝から二の滝へと移っていく濡れた山道でさら霧に見舞われ、前が見えなくなったみわは濡れた足場から滑ってそのまま崖へと。その瞬間、みわは落ちていく自分をスローモーションで見ていた。そのまま、那智の滝を見下ろす上空で、下に横たわっている自分を見ながらどうしようもなく漂っていると、前方の空間に何かが形を現し始めた。それは・・・むき出しになった脳だった。その脳から、胸に?響いてくる声?はKUMAGUSUと名乗り、私のこの姿が見えて、声を聞くことができるお前は何者だ?と聞いてくる。泣きながら、私は旅行に来ただけだ、イタキソよいうところにおばあちゃんのルーツを探しに来ただけよ、と言うと、声はやさしくなり、墜落のショックから抜け出てしまったのだというみわの肉体への戻り方を教えた。みわを探しに来た木村に、不思議に身体のどこにもケガもないみわは、夢を見たのだと思うが、とその話をする。信じないか笑うかだと思ったのに、愕然として、みわに見てほしいものがあるという木村。
その動画では、木村のアトリエに据え付けられた赤外線カメラの中で光る白い小さいものが飛び回っていた。虫でも埃でもない。妖精は、木村のアトリエに飾られている写真の額の中から出てきてその中に帰っていくのだ。
その写真は、彼が尊敬しているという、南方熊楠の20歳の時のポートレイトだという。・・・「君に話しかけたものは、くまぐす、と言ったんだね」
あまりにいっぺんにいろいろあって、不思議が多すぎて混乱して何も考えたくなくなったみわは、とにかく、当初の目的だったイタキソに行こう、と思う。幸い、木村が車を出してくれるというので、全行程安心ではないか。
だが、その夜から、あのときの脳からのメッセージが届き始める。
ー第一話脚本
― 森、原生林 の中、 樹木たち生い茂る
-プロローグ
( 我々は「あの方」であり、「あの方」は我々だ。我々の思うことが「あの方」を生み出し「あの方」の思うことが我々を生み出す。では「あの方」は誰だ。我々は誰なのだ)
屋久杉霊の声「すべての樹木は ネットワークで結ばれている。」
―幹の姿・根っこの姿 地球の姿
屋久杉霊の声「我々の幹は情報管。枝はニューロン。我々にだけわかる香りと言葉を葉先から出してコミュニケーションをとり合い、根を伝って遠方にと思いを送っていく。
人の脳のシナプスのように、我らの根っこは地中を行き交う。 めぐりめぐって、元を求めて、中心を求めて、何千年と、何億年と、めぐりてめぐる。いま、我々は危機に瀕している。」
―都市 ビルの林、開発現場 、土石流
屋久杉霊の声「我らとヒトはこの星を共にし、我らが滅すれば、ヒトも共滅する。
しかし、ヒトは、いまではもうそのことを忘れ果ててしまい、 愚かな経済的理由だけで我々を伐採し続けた。森を減らしていることで訪れようとしている最期の時に気づかせようと、これまで我々は様々にサインを送ってきてもだめだった。」
―マスク姿の人間 テレビ天気予報のスギ花粉予報 薬のCM
屋久杉霊の声「杉たちのネットワークは花粉を用いて、空気成分の異変、をヒトに知らせようと努めた。しかし、ヒト達は、それが杉たちからの必死の警告と気づくより、自分たちの身体に出る症状への対策にばかり目を向け、自分たちが自然界の日照のバランスを考えずに利益のために杉だらけにした山々への反省どころか、厄介者であるかのように疎ましく思うばかりだった。」
―うごめく毛虫 ニュース 切り倒された切り株
「次に、桜や山藤、ミズなどの小さな花をたくさん咲かせる樹々のネットワークは、彼らを好む毛虫たちを、精いっぱい発した香りで寄せ付けて繁殖させ、それらを風に乗せてはヒトの生活圏の中に送り込んだ。 毛虫の異常発生。 ヒトたちは、しかし、その「異常」の真の原因のそのまた原因にまで行きつかず、むしろ、毛虫の元を絶とうとよけいに桜たちを切り倒したのだ。そして、その季節の「異常」の条件が過ぎ去れば収まると安易に考えた。
―倒木が連なる山の斜面 ダム U字管
「 山からの雪解け水や湧き水は、その通路を次々にダムやコンクリートのU字管でふさがれ、土中の水の流れは行き場を失い、せきとめられる。その結果、その根から養分を吸い上げることができなくなり次々に枯れて倒れていく仲間たち。
しかし、その倒木の、屍の増加に気づくヒトは少ない。」兄弟である我々、樹木、の危機はそのままヒトの危機になることを警告しているのに。利益のために樹々を倒し、我々のライフラインを工事によって奪い、せき止め、途絶えさせ、ヒトたちは自分の首を絞めていく。このまま我らは絶え、ヒトも、ホシも絶えてゆくのか。」
―南方熊楠の顔 神社合祀反対の騒動 南方二書の表紙 神島 鎮守の森
「我々は思い出した。かつて自分たちの仲間を守った男。今はもうただ滾々と眠るだけの、知の巨人の脳。樹々だけでなく、自由自在に動くこともでき、宇宙間の情報も交信できる、極微の存在、地衣類や、粘菌とさえ通じることのできた男のことを。
狂人扱いされ、投獄されてから時を経て、故人となった今では知の巨人と呼ばれ崇められるようになったその男。紀州の南方熊楠。 彼の名は、熊野古道の一番に当たる藤代の大楠からつけられたという。 次々と切り倒される鎮守の森の樹々たちの声に突き動かされて反対運動をして投獄される。神島のタブの木を愛し、粘菌をはじめ、常軌をはずれるほどの集中力と記憶力による研究を残した彼の巨大な脳は実は本人の希望で解剖されたのち、いまも関西のある大学の研究室に、アルコール保存されて眠る。」
―脳のアップ
「起きよ。起きてくれ。我らの声を聞き取り我らとヒトを繋いで欲しいのだ。」
―K大学。正門。特別社会人セミナー会場の立て看板。 雷鳴! と共にいきなり、すべての灯りが消える。
スーツ姿の職員A「停電!? ここだけか?」
職員B 「ブレーカーには異常はないぞ。住宅街も他の建物も停電はしていない。」
携帯での問い合わせや検索に追われるスタッフ。
―一階の大教室。パワポに映し出された言葉をノートに書き写している久野みわ(23歳)。
『大昔、樹々と人間は兄弟だったという。 動かずに進化することを選んだのが樹木で
動いて進化することを選んだのがヒト。』 『私たちは樹木のそばでホッとする。
本がある部屋で落ち着くのも本は元は木だったから。』
感動に息をつめて前に立っている講師の脇田守(70)とパワポの文字を見比べている。
―教壇。いきなり電気も、映し出されていたパワポも消えた。
みわ「エーッ!?」何なの、いったい、こんな時イ」
脇坂「どうやら停電のようですね」
―脇坂 窓の外をしばらく見やった後、腕時計を確かめた。
脇坂「仕方ない、では、残りの資料はお帰りになられてからレジュメでご覧いただくことにして、復旧するまで、質問タイムとしましょう。何か、この際ですから、聞いておきたいこととかありませんか」光った頭部に手をやりながら促す。
みわ、躊躇してから思い切って手を挙げる。
みわ「あの、こんなこと、植樹のこととはちょっと違うのですけれど、あの、こんなことを、先生になら伺ってみてもと思って・・・私は、木が好きで、特に大きな木が、楠とか、が好きで、写真を撮ったりしています。で、最初はただの偶然かと思ったんですが、どこに行っても、どこの樹も、あらかじめ、私のことを知って待っていたとしか思えなくて、絶妙なタイミングで、花を散らさないでいたり、道に迷ったらなんとなく教えてくれたり、私が会いに行こうと決めると、もう知っていてくれる気がするんです。
つまり、桜には、桜のネットワークが、銀杏には銀杏のネットワアークとかがあって、東京の街路樹の桜を見上げて思ったこと、や言ったことが、別の山の桜に伝わっていたりとか、樹からは、こちらが何者かを知られているのではないか・・・と」
―数秒、みわの顔を見つめたのち、脇坂がマイクを口に当て直す。
脇坂「・・・それが、樹木です。私も、待たれていたのを感じることがあります。長年、樹々と接していると、彼ら、樹木のことですが、は、自然界や目に見えないものへの畏怖を忘れた私たちのことをみんなわかっていて、なおかつそれを許容し、協力さえしてくれているのではないかと思うことがあります。ただ、残念なことに、そのことに気づく人がまだあまりにも少ないのです。いや、正確には、現代の人間は、といえばいいですかね。昔の人はわかっていたと思います。縄文人しかり、です。いまではただの友好か記念のためのようにになっている皇室の方々による全国の僻地にまで及ぶ植樹ですが、 本来は森の守人であったヤマトの民族は植物が交信すること、情報網を持つことを知っていたという伝えがあります。思いを込めて木を植えるとき、樹々とヒトには関係ができる。神代のスメラたちはそれを用いたという話です。」
―教室の外 エレベーター 地下 通路ドア 資料庫と書かれたドア
―資料庫内全貌 落雷停電で真っ暗な中、そこだけ光っているガラスの筒のアップ
中にホルマリン液 沢山の細い管に繋がれている脳
バチッバチッと微かな音
―看板 ニュータウン予定地 〇〇建設
基礎のために沢山の深い穴 敷地の奥の雑木林で盛り土に乗り上げているブルドーザー
作業員「なんだ!?コレーッ?!全然だめだ」
ヘルメットをかぶりながら歩いてくる別の作業員。
「代わるぞ、どいてろ」運転席に乗ろうとして滑ってころぶ
「わ、ナンダよ、こんなに苔だらけで・・・」
―ブルドーザーの周囲の地面のアップ
黄色い長い筋がはびこり、ブルドーザーのキャタピラにも、エンジン部分にもビッシリと・・・ -2話に続く
ファンタジー
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