四年後の今日、大銀杏の下で会いましょう。初恋の相手とのそんな約束はとうに流れ、時も流れた。ピアノ演奏でヨーロッパをドサ回りして疲弊していた和田響は、家族で唯一自分の味方だった祖父の死をきっかけに10年ぶりで実家に戻る。恩師に頼まれて母校の音楽講師となり、必然的に音楽部の顧問となった響は、高校生たちとの触れ合いの中で胸の奥にしまい込んでいた初恋が蘇る。ところがもう二度と会うことはないだろうと思っていた初恋の相手井原渉が春から教員として赴任し、あの頃の続きのように話しかける井原に昔に戻ったような錯覚にとらわれる。だが井原をねらっていた同じ新任の美人英語教師荒川が音楽室の響の元に通いつめる井原に業を煮やし、響に対して、「こんな田舎で男同士ってリスクが高いんじゃないですか」などと脅しのようにつめよっているのを偶然耳にした音楽部員らは一計を案じとある作戦を実行する。