「たーくんね、あきくんのカレーきらい」そんな巧の一言に彰は凍りついた。巧は今は亡き妻、由美の連れ子だ。彰は巧にどう接していいのか悩んでいた。彰は巧の栄養状態を心配して手作りのカレーを作ったが、巧は『きらい』といい、一口しか食べない。コンビニの弁当や給食は食べるのに、彰が作ったカレーは食べない。その事実は悪夢を見るほど彰にとってショックだった。
翌日も彰は昨日の出来事が頭から離れなかった。すると課長の上沼が彰に声をかけた。彰は昨日の出来事を説明すると、上沼はカレーのレシピを彰に手渡す。だがうまくいかず、上沼は彰の適当な分量や火加減に原因があるのではないかと推察する。そして指導のために、上沼は彰の家へ行くことになった。
やって来た上沼は大雑把な性格の彰のために、簡単にできてかつ栄養も取れるレシピを探し出していた。彰が最後にトッピングをしたカレーを巧は『ママカレー』だと喜ぶ。その笑顔に彰は亡き妻を重ねるのだった。
十数年後。成長した巧は夕食当番をサボり、怒られた巧は彰に『あきくんのカレー』が食べたいとせがむ。そして二人でカレーを作り食べ始める。そんな二人を由美は微笑ましく見守っていた。