とある本屋で働く青年、君生(きみじょう) 直希(なおき)。
彼はフリーターを続ける傍ら、小説家になる夢を密かに追い続けていた。
が、自信が持てないが故に今一つ本気になれず結果も出せず。
ただ流されるまま、無味乾燥な毎日を惰性的に過ごしていた。
そんなある日。
彼の前に、「直希が生まれた頃から彼を知っている」と豪語する謎の女性、未来(みき)が現れる。
彼女と会った事も話した記憶も無い、完全に初対面の直希に向けて、未来は言い放つ。
「いつになるかは分からないけれど、私はいつか、君の前から必ずいなくなる運命にある」
「だから、それまでの間、私と付き合って欲しい。
君がもう一度、君を好きになる為に。
君が、本当の君になる為に」
訳も分からないまま半信半疑、渋々ながらも、ミステリアスな未来と仮初の恋人関係を結ぶ直希。
そんな二人の前に、未来さえも知らなかった、予測し得なかった巨大な壁が立ちはだかり、二人を引き離さんとする。
そこで初めて未来は自らに課され隠された、余りに残酷な、悲しい宿命を目の当たりにする。
際限ない絶望に翻弄され、切ない思いを抱えながらも、彼女は決して希望を切らさず、切に願う。
「もう一度、君に、君を好きになって欲しい」と。
「ずっと永遠に、君らしく生き続けて欲しい」と。
「私は、いつだって、何度だって願ってみせる。
どうか君が君で、絶えず幸せであって欲しいと。
そう……君が、君(すき)になるまで」
ーーただ、それだけ。
それだけを最後まで願い、信じ続けた一人の女性が紡ぐ。
飛び切り不思議な、真っ直ぐな思いの物語。
※若干のホラー要素を含みます