美術専門学校へ通う七恵と美幸は卒業後の進路で悩んできた。
水商売やイベントガールとして学費を稼いだ美幸と違い七恵はいわゆる社会経験がない。
社会勉強はもっぱら美幸から聞く話ばかりだった。
春の日差しに浮かれ駒沢通りを歩いていた七恵はいきなり水をかけられた。
若い板前が営業前の店頭に撒く水だった。
割烹田端。
七恵はその店の店主田端行雄、その妻純子、若い板前嘉人と知り合いその店で洗い場としてのアルバイトをする事になる。
卒業生が皆、企業やデザイン事務所に就職する中、七恵はそのまま割烹田端のアルバイトを続ける。
なぜならそこで陶器に魅せられたからだ。陶芸家になりたい。幸いにも田端の近所にある陶芸教室で助手見習いの職を得ることになった。
職と言っても給料は微々たるもの、田端の洗い場と兼業である。
田端の妻、純子の母が倒れ介護のため彼女が働けなくなった。その日、たまたま遊びに来ていた美幸が着物を着て代役を務めることになった。しかし着付けが出来ない。
純子は若いころフランス料理を学んだ事がある、その先生が広尾で料理店を開いている香織だった。香織は純子に頼まれ、美幸の着付けに割烹田端を訪れる。
着物を着た二人、七恵は陶芸教室と割烹田端の洗い場、美幸は割烹田端の女将代理。
二人の立場が微妙に食い違う。しかし友人は友人である。
七恵は陶芸で身を立てようとするが、実際には生活費もままらない。美幸は、割烹料理の女将をめざし始める。
しかし女将だけでは店は出来ない。そこで七恵が心を寄せていることを薄々知りながらも板前の嘉人を誘う。
元々純子に恋心を頂いていた嘉人は、彼女の気配を持つ美幸に心を許し、彼女の店作りを手伝おうと思い始める。
美幸と嘉人の独立。七恵は友人とはいえ、美幸の目論見を大好きな純子と田端のために阻止したい。しかしそれが良いのか解らずにいた。香織が人生の先輩として相談相手となる。
様子を知った店主の田端が若い二人の独立を応援し始め、直ぐに居抜きの料理屋を見つけた。
割烹嘉人の開店、そして美幸と嘉人の結婚、更に美幸のお腹には既に子供がいた。
七恵は自分の気持ちを押し殺し全てを祝福するがそれもつかの間、出産時、美幸が他界する。七恵は残された美幸の子供を育てる決心をする。
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