これは、呪われた狼と歌姫の童話めいた恋の物語。
千年の昔、黒薔薇の魔女ザンナは世界から光を奪おうとした。
白百合の聖女イデアは地の果てロヴィナに悪しき魔女を封じ、人々を救った。
ヴェント大陸に伝わる聖典には斯くのごとく綴られている。
美しい歌声と可憐な容姿より、天性の歌姫と讃えられているエマ・カファーロ。
聖都ピラストロにて女性だけの聖歌隊(カントーレ)に属する彼女は、その才能からフィオレッタと呼ばれる聖歌隊の最高位に就いている。
歌で人々の心を癒す務めに励む日々。
困難はあれども、エマの人生はやり甲斐と幸福で満たされていた。
けれど、ある日。
姉のように慕っている仲間のナタリアが不本意な事情で聖歌隊を退くことを知る。
ナタリアを救いたいと悩むエマ。
そんな彼女の前に、クラウディオと名乗る男が現われ、こう持ちかけてくる。
あなたの歌を差し出せば、私の主が願いを叶えます―と。
誘われるがままに契約に応じてしまったエマはそのまま意識を失ってしまう。
目覚めたエマを待ち受けていたのは大きな大きな漆黒の狼――魔術師イレネオだった。
イレネオは黒薔薇の魔女の呪いのせいで眠れなくなったという。
魔術の契約でエマの歌声を手に入れたイレネオ。
その歌声が眠りの妙薬になるという理由から、高圧的な態度でエマに歌えと命じてくる。
最初は反発していたエマだったが、イレネオの強硬な態度の奥にひそむ優しさと弱さに触れ、歌うことを承諾する。
子守歌のおかげで心地良さそうに眠るイレネオの姿に一安心のエマ。
さあ、そのまま寝所を去ろう――としたものの、イレネオのモッフモフの毛並の魅力に抗えず、ついつい身を埋めてしまう。
ふわふわの夢心地はいつしか本当の夢へ……。
翌朝。
信じられない光景を目にしたエマはあたりを切り裂くような悲鳴を上げる……。
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