その年の二月五日。
私は原因不明の病に襲われた。
かかりつけ医から紹介状を書いて貰い、少し遠くの大きな救急病院で検査を受けると、私の体がとんでもない状態に陥っていることがわかった。
繰り返えされる手術。しかも三回。
うち二回は死の淵まで行ってしまった。
三回目の手術が終わり、漸く容態が落ち着いたかと思ったら、今度は何故か脳梗塞を発症。
結局三度死の淵まで行ってしまった私には幾つもの後遺症が残ってしまった。
脳梗塞から二ヶ月ほど、なんとか一般病棟の個室へと移ったが。私が入院していることを知った元同級生の新興宗教信者――こと『宗教女』が私を勧誘に来た。
人づてに、「今は人前に出られる状態ではないから。見舞いは遠慮してくれ」と言ったにも関わらず堂々と勧誘に来た。
その後『宗教女』は病院から放り出されたようだ。
私は出来るだけ速やかにリハビリ病棟へと移りリハビリを始めるのだが。その頃には更に次々と判明する後遺症にショックを受けていた。
体の方は消化器系の臓器の一つを大部分切除したことで、あまり物だ食べられない。おまけに斜視が治らないことが確定。大幅な体質変化に内面はごく軽い記憶障害等々。
それらに悩みながらもリハビリは進み、半年弱の入院は終わり、私は退院した。
それから一ヶ月も経たないうちに、父親が自分でもよくわからない投資を始めた。
数年後。その投資はサギだったことがわかり。激昂した父は警察も通さず相手のところに乗り込んで行こうとする。
頭に血が登ったままでは傷害事件や殺人事件が起きかねない。加害者になっても被害者になっても、私達家族は親類縁者に会わす顔がなくなってしまう。
「どうしても行くなら私を殺してから行ってくれ！」と、命をかけて止めたけど、それは数年間ことあるごとに繰り返された。
結局、とある弁護士のところまで相談に行って、父は渋々諦めた。それまでは、自分が『騙された』ことを認めたくなかったらしい。
それからすぐに、私と母は市役所に行って障害基礎年金の手続きをしたが、認められなかった。国の基準を満たしていないからだ。
七十年以上もの昔に決められた基準が、今も私達のような人間を苦しめる。
時代に合わない基準。必要な人間のところに差し伸べられない支援の手。私は心から願う。
コロナ過が収束してからで構わない。
必要な人に必要な支援の手が差し伸べられるように。と……。
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