婚約者、山内とともに、数年ぶりの帰郷をした紬。故郷は何も変わっていないようだった。
何をしようとも筒抜けで、逃げ場もない。田舎のどこか不躾な言い回しが、この町が、嫌いだった。
帰郷して次の日。隣町へ出ようとした道中、駅で見かけたのは、母校の制服を着た中学生だった。
一つに結んだ髪も、制服のリボンもスカートも長く、重く揺れる。楽しそうに話す少女たちを見て思い出すのは、危うくて痛々しい14歳の頃のことだった。
見返りも理由もない恋など、あの人が初めてで、ずっと、一番好きだった人。
紬の通っていた中学校の美術教師、水村は紬の所属する美術部の顧問を務めていた。
水村は、友人もおらず、鬱屈とした紬の毎日に居場所をくれた。紬は次第に、水村に惹かれていく――。
誰にも一度はある、忘れられない恋の話。
それでも、彼女の幸せは今ここにある。
青春
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