心身共に疲れ切ってしまった彩空(りあ)は、現実を全て切り離し逃避行する。
ただ遠くへ行きたくて乗った電車だったが、着いたのは「ふじさき」という妙な村だった。
そこで出会った藤の香りを身に纏う、思わず見とれてしまうような藤理(とうり)と名乗る男性だった。
ひょんなことから、彩空は藤理の元で共に生活するようになる。
都会育ちで田舎に縁のなかった彩空であったが、藤理や村の人たちとの生活は傷ついた彩空の心を優しく包む。
まるで現実と切り離されたように、村の暮らしはゆっくりと穏やかに流れていき、その中で彩空と藤理は互いになくてはならない存在となってゆく。
しかしある日、藤理は彩空へ東京へ帰るようにと告げる。
なぜ、藤理はそんなことを言い出したのか、まったくわからないまま彩空は・・・・。