(カクヨム・なろうにて同時掲載予定)
中学校三年生卒業の日、甲斐純一郎は幼馴染である鈴村茜と同じ高校へ進学が決まっていた。
この中学校にはとあるゲームのような伝説があった。
校庭中庭の伝説の木の下で告白して成立したカップルは、ずっと幸せに一緒にいられるという……。
純一郎は茜に告白するため、来るべき勝負の日に向けずっと自分磨きに明け暮れていた。
茜も純一郎に告白しようと、ずっと男子からの告白を断り続け、女子力を磨いてきた。
彼も彼女も、どちらが先に告白してもおかしくはないこの緊迫した状況で、
茜は純一郎からのメッセージ【伝説の木の下でまつ】というものを受信した。
その時、茜は同じ幼馴染である佐藤翔に声をかけられる。
「茜!いよいよだな!告白頑張れよ!」
「ありがとう翔!」
たまに翔に恋愛相談に乗ってもらっていた彼女は、つい無駄話をしながら校庭まで一緒に歩いてしまった。
そしてちょうど伝説の木の下にいるところを、純一郎に見られてしまったのだ。
不幸にも純一郎が耳にした茜の『ありがとう翔!』が、彼には告白を喜んで受け入れた瞬間に見えたのだ。
「あ、ジュン!ちょうど……」
「茜!翔!お幸せにな!!」
「え?」
大粒の涙を流しながら走り去る純一郎、呆気にとられるも翔が察して彼女に叫んだ。
「追いかけろ!茜!」
「え?う、うん!」
言われるがまま、茜は追いかける。だが自分磨きに余念なく、文武両道を掲げて鍛え上げた彼に追いつくのは容易じゃなかった。
「ジュン!ハァハァ……まって!」
ようやく後姿が見えたと思った瞬間、彼女が目にしたのはマンホールへ落ちていく純一郎の姿だった……。