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三田るな

みたるな

横浜に住んでいます。
嘘のない小説家を目指しています。
夢はハリウッド作品をつくる(原作を書きあげる)ことです。英語は苦手なので頑張ります。「ほんやくこんにゃく」が欲しい…

デイサービス日記①104歳のおじいちゃんの話

車椅子に乗せられて、週に2.3回やって来る。

腕を組んで、まっすぐ前だけを見て、返事はしてくれるけど、自分からは何も言わない。

耳は遠くない。意思疎通も良好。既往歴はあることはある。

私は彼が柔道を長くやっていて黒帯だったということと、尿バルーンの尿量、排便状況、普段の食事量、家族が連絡帳に書いて来る情報、くらいしか知らない。

立ち上がる時に、ウウンと唸りながらもしっかり立つ。

でも座った後に「しんどい」と言う。

ベッドに寝かせると、たまに「助けてください」と言う。

私はその度に、一世紀を生き抜いた人だ、と思う。

戦争や高度経済成長やバブルや不景気やコロナを生き抜いて、私の働くデイサービスに来ているのだ。

ご飯はミキサー食と言って、形もないし見た目もゼリーのようで美味しくない。

でもそれを、かきこみながら自力で全部食べる。

高齢だから嚥下が危うい。でも、ゴホゴホ言いながら全部食べる。お茶も一滴も残さず、全部。

そんなおじいちゃんが、この前、帰り際に頭をポンポン叩きながら「頭がない」と言った。

帽子のことかな、と思って私はバッグから帽子を出して被せた。

「頭がないって言うから、頭はついてるのにって思っちゃった」

と言ったら、声を出してガハハ、と笑ってくれた。

もっと生きてほしいなあ、と思う。

甘いものが大好き。おやつに誘うと、どんなに眠くても絶対に起きる。

そしておやつもかっこむ。ほんの30秒くらいで全部すっからかん。

最近、寝てばかりで状態が危うい。

老衰、というやつだ。

でも、受け入れてあげたい。

彼の生も死も。

いってらっしゃい、といつでも言えるように。

その前に自分が倒れちゃあ仕方がない。

でもありうる。お互いしんどいからなあ。

どうしたら介護疲れは解消できるんだ。

どうしたら。





コメント

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  • y.kato-channel

    「毎秒1枚、提出したします。」
    読ませてもらいました!
    面白かったです。
    コメントを書いたので、
    よかったら、
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