デイサービス日記①104歳のおじいちゃんの話
車椅子に乗せられて、週に2.3回やって来る。
腕を組んで、まっすぐ前だけを見て、返事はしてくれるけど、自分からは何も言わない。
耳は遠くない。意思疎通も良好。既往歴はあることはある。
私は彼が柔道を長くやっていて黒帯だったということと、尿バルーンの尿量、排便状況、普段の食事量、家族が連絡帳に書いて来る情報、くらいしか知らない。
立ち上がる時に、ウウンと唸りながらもしっかり立つ。
でも座った後に「しんどい」と言う。
ベッドに寝かせると、たまに「助けてください」と言う。
私はその度に、一世紀を生き抜いた人だ、と思う。
戦争や高度経済成長やバブルや不景気やコロナを生き抜いて、私の働くデイサービスに来ているのだ。
ご飯はミキサー食と言って、形もないし見た目もゼリーのようで美味しくない。
でもそれを、かきこみながら自力で全部食べる。
高齢だから嚥下が危うい。でも、ゴホゴホ言いながら全部食べる。お茶も一滴も残さず、全部。
そんなおじいちゃんが、この前、帰り際に頭をポンポン叩きながら「頭がない」と言った。
帽子のことかな、と思って私はバッグから帽子を出して被せた。
「頭がないって言うから、頭はついてるのにって思っちゃった」
と言ったら、声を出してガハハ、と笑ってくれた。
もっと生きてほしいなあ、と思う。
甘いものが大好き。おやつに誘うと、どんなに眠くても絶対に起きる。
そしておやつもかっこむ。ほんの30秒くらいで全部すっからかん。
最近、寝てばかりで状態が危うい。
老衰、というやつだ。
でも、受け入れてあげたい。
彼の生も死も。
いってらっしゃい、といつでも言えるように。
その前に自分が倒れちゃあ仕方がない。
でもありうる。お互いしんどいからなあ。
どうしたら介護疲れは解消できるんだ。
どうしたら。
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コメント
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- y.kato-channel
「毎秒1枚、提出したします。」
読ませてもらいました!
面白かったです。
コメントを書いたので、
よかったら、
読んでください!
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